「ようやく会えたわね、シャドルー総帥…!あなたの野望もこれで終わりよ!」
長い旅路の果て、ついに父を殺害した仇敵と相対した春麗は、自身が格闘家として捧げてきた修行の全てが結実しようとしているのを確かに感じていた。「最強」を追い求める求道者として、そして正義を執行するICPO捜査官として、秘密結社シャドルーの壊滅を誓った旅がいま終わろうとしている。邪念や雑念はもはや消えさり、彼女の精神はまさに明鏡止水の境地にあると言ってよかった。
「ウハハハハ…!身の程知らずの雌犬よ、貴様も我がシャドルーの下僕としてやろう…」
無人の聖堂でついに春麗の前に姿を現したその男は、彼女の決意を侮蔑するかのように身をよじって笑い、両拳に禍々しい光を浮かべた。「サイコ・パワー」と呼ばれるその闇光は、あらゆる武術をねじ伏せる圧倒的な力を発揮し、敗北した者の精神を屈従させて意のままに操ることすらできるという。
「身をもって知るがいい…我がサイコパワーのすさまじさをな!」
軍服のような威圧的な衣装に身を包んだその男は狂ったような笑みを浮かべる。最後の戦いが始まろうとしていた。春麗はゾッとするような思いを感じながら、自分を鼓舞するように叫ぶ。
「さぁ、かかってきなさい!シャドルー総帥…魔人ベガ!」
* * *
「はぁっ、はぁっ、こ…こんなはずじゃ…?」
しかし、春麗のあらゆる武技はベガの圧倒的なサイコ・パワーの前でまるで意味を成さなかった。ただひたすらに人生を賭して極めてきたはずの武術だったが、ベガは彼女のどの技も全く避けようとせず、たとえクリーンヒットしても微動だにしない。青春を捧げた十数年の修行が虚しくなるほどに、彼女は無力だった。
「グハハハハァ、さきほどまでの威勢はどうした?まさかその程度でワシを斃そうという気だったのか?…ウリャア!」
「ぐほおっ!げぼっ…」
多くの敵を屠ってきた武技が全く通じないという事実に、彼女は戦慄した。鮮やかな蹴り技も練りに練った気功波も、ベガにただ一つの傷も刻みつけることはできない。この戦いには、格闘技の試合のような制限時間など始めからない。彼女にできるのはひたすらベガの魔技から逃げ回り、幼な児のようにこづき回されることだけだった。
「我が名を刻めい!ニープレス・ナイトメア!」
(ドグシャッ!ボゴオッ!)
「エヤッ!テイイイッ!」「グハハハハッ、まだまだ!ドウリヤァ!」
(バゴッ、ビシイッ!)
「どうした、どうした!起き上がってかかってこい!」「ドウリャッ!ぬうんっ!」
(バグッ!ドコォッ!)
「どうしたどうした、ガハハハハハハッ…セイヤッ!」「サイコパワーは無限だ…!ウリリリリヤッ!」
「ううっ、はぁ、はぁ…!そ、そんな…これほどまでに強いだなんて…!?」
「絶望に呻け…!ぬうううんっ!サイコ・クラッシャー!」
「ヒッ…!いやああああああああああああああああっ!」
* * *
戦いが始まっておよそ30分。無人の聖堂での格闘は、もはや戦いというより「処刑」の様相すら呈し始めたが、ベガは一切の手加減も見せなかった。
「ごほっ、くっ、こんな…こんなことって…!」
「ガッハッハッハッハ、どうした雌犬、打ってこなければワシを倒せぬぞ?…そうだ、雄を誘う見せ物の踊りならばふさわしい装いが必要だなぁ…!」
「ヒッ…!?なっ、何を…!」
そして、さらなる悲劇が始まった。いじめられっ子のように逃げ回る無様な戦いぶりを嘲笑しながら、ベガは打撃を加えるたびに春麗の武術着を破り取っていく。致命傷を避けるのがやっとの春麗には、ただひたすらもてあそばれることしかできなかった。魔人が拳を繰り出すたびに、サイコパワーの炎に触れた武術着は蒸発し、美しい肌が露わになっていく。ついに春麗は、乳房も露わな裸姿をさらすことになった。
「さきほどまでの脚技はどうした?ああん?…武術ですらない見せものの踊りなら、踊り子らしく男に媚びを売ってみせィ!」
「ううっ…こ、こんな屈辱を…!も、もう…殺して…!」
「何ィ?まだまだ戦いは始まったばかりではないか、格闘家ならば早々にあきらめるな!グハハハハ!」
「セヤッ!」
「あぐうっ…!」
春麗はベガの豪腕に髪を掴まれ、軽々と宙に持ち上げられてしまう。もはや指一本動かす力もない。涙を浮かべる彼女の表情を覗き込むようにしたベガは、この後の「お楽しみ」を想像して愉悦の笑みを浮かべた。
そして、最後のラッシュが始まる。
「ウリャ!セイ!」
「どうしたどうした!」
「ハッ!ハァッ!」
「まだまだあ!ドウリャアッ!」
「父の敵を取るのではなかったのか?!グハハハハッ!」
一切の遠慮なく、ひたすら腹部に打ち込まれるサイコパワーの拳。連打に次ぐ連打に、彼女はなすすべもなく悶絶した。
「あっ…あが…がはっ…。も、もうやめ…べ…」
死を覚悟した春麗は、最期にせめて結婚を誓った恋人のことを想い出そうとしたが、
(ごめんね…グレッグ… わたし、もう帰…れな…)
それすらもかなわず、鼓弓の弦が切れるように彼女の意識は闇に飲まれた。
ICPO捜査官にして美麗の格闘家、春麗はサイコパワーの前に無様な敗北を遂げた。彼女が「春麗」のままであるうちに最後に耳にしたのは、彼女が望んだ愛する人の声ではなく、仇敵の狂喜する声であった。
「無力な雌犬よ、貴様は我が記念すべき100体目の洗脳人形にしてやろう…。貴様は今日からこのベガ専属の人形に改造され、喜びとともに永遠に奉仕するのだ!グッハハハハハハァ…!」
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いいセンスだ。
ありがとうございます!(=´∀`)
いいせんすですね。
チュンリーって銭形と同じ場所に所属してたんすねw
ありがとうございますー!インターポール(ICPO)の麻薬捜査官ということみたいですね。銭形と同じく一体どうやって出向したのか謎ですが(笑)
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