○月×日
あの男が家に上がり込むようになって、きょうで5日。何度掃除しても、会社から帰るたびに部屋が荒らされていて本当にがっくり来る。残業でべったり疲れて帰ってきたのに、今日もコンドームをコンビニに買いに行かせられた。クソ。あんな軽薄な男なのに、陽菜までなぜかなついているのも気にくわない。親子でイケメン好きなのか。あの男、今日は「俺のことはパパって言うんだよ~」なんて教え込んでいた。最悪の気分だ。
○月×日
陽美があの男とヤっているのを見るたびに、どうしても物凄く興奮してしまう。憂鬱だ。もういつから陽美としていないのか思い出せないが、陽美と今更セックスがしたいから勃起してしまうわけでもない。ネトラレ性癖というのか、他の男にメロメロになっている大切な妻を傍観しているというシチュエーションに、凄く興奮してしまう。自分は変態なのだろうか?
今日も、中学のころのことを思い出してこっそりトイレでオナニーしてしまった。あの2人にバレたら大変だ。陽菜のこれからのことを考えると、すごく憂鬱になる。陽菜が小学校に入ったら、自分は父として入学式に行けるのだろうか?陽美のとなりにはあの男がニヤニヤして立っている気がする。はあ。
○月×日
陽美にもタカシにも、もうほとんど無視されている日々だ。まるで空気扱いで、「おい!」とか「ゴム!」とか、そんな言葉しかかけてもらえない。それなのに、タカシといちゃいちゃしている妻を見るだけで、どうしても胸が高鳴って、チンポが情けなく勃起してしまう。「ああ、もうこの方は僕なんかの妻ではないんだ」と感じるたびに、倒錯した興奮を感じる。
最近、陽美が平気で万引き行為を繰り返していることを知ってしまった。意外にショックがない自分に驚いた。最近の陽美は格好といい化粧といい言葉遣いといい、そこらの20前後のバカなエロギャルと変わりない姿になっている。万引きもお手の物ということか。かつての女性エリートの面影なんて、どこにも見あたらない。男に媚びておっぱいを見せびらかす、そこらの娼婦みたいだ。今度、タカシとおそろいのタトゥーを入れるらしい。
昨日はタカシの車を運転させられて新宿のドンキに行かされ、万引きに手を貸してしまった。会社にバレたらどうなるだろうか。おどおどしている僕を、陽美はバカにするように笑っていた。「万引きなんかで何キョドってんの?バカみたい」。昔は決してこんなことを言うひとではなかったのに。
2人が盗んだのは大量のバイブやら安っぽいエロ下着やら、卑猥なものばかりだった。近くの大型駐車場に止めるように言われ、そのとおりにすると、僕に何の断りもなく後部座席で二人のセックスが始まった。まるで僕は蚊帳の外だ。今更ショックでもないが、陰鬱な気分になることは変わらない。
「タカシぃ、あたしまたアレしてハメて欲しいな」と媚びたような口調で言うので何かと思ったら、陽美は犬がするような革製の黒い首輪をバッグから取り出した。少なからず驚いた。ソレを付けてセックスをするのが彼らの最近のトレンドらしい。彼女の首にぎちりとその首輪をはめ、「コレをしている間は、わかってるよな?」とタカシがいうと、陽美は彼のズボンを下ろしながら、「もちろんわかっておりますご主人様。陽美のえっちなおまんこでご主人様のザーメンを抜き抜きさせて下さいませ♪」と突然敬語を話し出した。きちきちとした、会社にいたころのような流麗な敬語。それなのに、内容は猥褻極まりない隠語ばかり。これには僕も興奮して、我慢汁がパンツをぐっしょりと濡らしてしまった。首輪をしている間は最上級の敬語を使い、徹底的に彼の奴隷として振る舞うルールらしい。なんて変態的なんだろう。
タカシの性欲を妻が「処理」しているあいだ、僕は運転席でまんじりともせず座って待っていた。タカシにまたがっている妻の嬌声とともにワンボックスカーがぎっしぎっしと揺れるが、振り返ってその痴態を見るのも気が引けた。ビンビンに勃起した自分自身を意識しないようにしながら、僕はじっと座って「お二人の時間」が過ぎるのを待っていた。
マンションに帰ってから、陽菜の面倒もそこそこに、トイレで3回抜いた。ヤミツキになりそうだ。
○月×日(2週間後)
最近、お二人に素直に従うことが自分に許された幸せなのだとようやくわかってきた。服や大事にしていた趣味のDVDやガレージキットなども全て捨てられてしまったし、タカシ様の言うように素直な奴隷としてお二人に仕えたほうがずっと幸せだ。そう考えるようになってから、お二人に土下座をしてセックスを見学させて頂くのも、万引きのお手伝いをするのも苦にならなくなってきた。ただ、オナニーは依然禁止されているので、ひっそりと家や会社のトイレで抜くほかないのが目下の悩みだ。まだタカシ様を紹介されていないころは深夜にエロサイトを見て抜いていたのだが、それもままならない。トイレに携帯電話で官能小説のサイトを見てはオナニーする日々だ。
ちょっと言いつけを守らないだけでタカシ様に蹴られるので、密かにオナニーしていることがバレたらどんな罰を受けるのだろう。しかし、その「罰」すらも少し愉しみにしてしまう自分がいる。今更だが、妻が奪われてしまったことをどこか喜んでいる自分がいて、ため息をついてしまう。僕は心底変態なのだ。
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