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陽美~凛々しかった妻の変貌~【22】完

最終更新:2010/11/11 00:53 │ ブログ記事 | コメント(0)

○月×日

 失業手当の受給期間が終わってしまいました。わたしは今も陽美様の収入に頼りきりの「ひも」状態が続いていて、まったく働く意欲も持たずに毎日ごろごろとしています。月に百数十万円も稼ぎ出す陽美様の前では、すずめの涙程度の月給ではとても働く気になれないのもある意味当然といえるかもしれません。陽美様も陽菜様もいないがらんとした部屋で、わたしは今日も陽美様のご帰宅をお待ちしています。やることといえば、この日記を書くことと、部屋の掃除や洗濯、買出し、陽美様のお食事の準備・・・まるで主婦のようですね。大の男が働きもせず、情けない限りです。


 そういえば、陽菜様が施設に引き取られて、もう3カ月になります。陽美様は今の仕事を始めてから、ストレスのはけ口としてわたしや陽菜に暴力を振るうようになってしまい、窃盗など犯罪がらみのトラブルを起こすこともしばしばになりました。結局、そうした荒れた家庭環境が児童相談所の知るところとなり、私たち夫婦には子供を育てる資格がないと判断されたのです。タカシ様がいたころから、陽菜様に児童向けのアニメのかわりにアダルトビデオを見せて寝かしつけていたほど異常な家庭だったので、当然も当然と言えるでしょう。陽菜がどんな子に育つのか、わたしには想像もできません。



ハニカム  ハニカム

しかし、仕事を始めたころの陽美様の不安定さといったらありませんでした。初めはわたしをベルトで殴りつけたり、土下座させて唾を吐きかけたり、首輪をつけてペットフードを食べさせたりする程度(わたしにとってはせいぜいお仕置きか、むしろご褒美のようなものです)だったのですが、そうした行為はしだいにエスカレートし、大声で泣く陽菜様に手をあげるようになるまでにそう日は掛かりませんでした。きちんとした生活基盤を築き上げればふたたび引き取ることができるということですが、こんな無職と風俗嬢の夫婦に「生活基盤」など望むべくもありません。


「となりの奥さんは風俗で働いていて、日中娘さんを放置しているようだ。旦那は何をしているかわからない」

「毎日火の付いたように子どもの泣き声がする。児童虐待ではないか」

「暴力団員のような男が出入りしているのを何度も見た」

もともとマンション内でも評判のすこぶる悪かった我が家のこと、すぐに妻の行為や我が家の異常生活は警察に通報されてしまいました。陽美様の盗癖はソープで働いているストレスもあってさらにひどくなっていて、窃盗容疑で一度身柄を拘束されたことすらありました。いきなり警察の方がマンションにどかどかと上がり込んできた日、わたしは黒崎氏が初めて訪ねてきたときのことを思い出して震えてしまったものです。わたしも警察署に呼び出され、普段の生活やら家族についてやら色々と刑事さんに聞かれました。結局証拠不十分で釈放されたので、ほっと胸をなでおろしましたが・・・。

その後、難しい手続きのことは全てあちらにお任せしてしまったのでよくわかりませんが、家裁やら児童相談所やらの判断で、結局陽菜様はうちのマンションから施設に引き取られることになりました。こうした一連のトラブルはあっという間にわたしの会社にも知れ渡るところとなったので、もともと残業拒否や窃盗幇助の噂が出回るなど不良社員化していたわたしは、アッサリと解雇されることが決まりました。少し前までは幸せな生活をしていた私たち家族は、こうして完全に崩壊してしまったのです。


  
全てが狂ったのは、タカシ様が陽美様の前に現れたときなのでしょうか。それとも黒崎氏が家を訪れたあの日から? それともやはり、もう名前も思い出せないあの派遣社員の子とわたしが不倫関係を持ったのが、全てのはじまりということになるのでしょうか。ともあれ、エリート中のエリートだった妻がいつの間にかヤクザの言いなりのソープ嬢に堕ち、わたしも妻も愛してやまなかった娘が施設に引き取られてしまったのは間違いのない事実でした。そして、妻が「肉体労働」で稼いだ金で喰わせて貰っている、無職でおむつが手放せない変態になってしまったわたし。これを喜劇と言わずなんというのでしょうか。わたしの今の悦びは、顔も知らぬ男に毎日抱かれて帰ってくる妻を想像して、むなしく一人で射精を繰り返すことだけなのです。


「ああ、お帰りなさいませ陽美様。今日は何人のお客様を取られたのですか・・・それはお疲れ様でした。リビングにお食事の準備ができております。はい、もちろんお酒もお煙草も買っておきました。お靴を舐めて綺麗にしておきますので、どうぞごゆっくり・・・」


【完】



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