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陽美~凛々しかった妻の変貌~【2】

最終更新:2010/07/14 01:22 │ ブログ記事 | コメント(0)

 博隆の妻・陽美は、もともと彼の上司にあたる女性だった。結婚を期に会社を退職し、現在は専業主婦の身だが、会社で総合職として働いていたころの陽美は、その美しさと優秀さで社内でも有名な才媛だった。

つややかなストレートヘアーに、意志の強そうなととのった目鼻立ち。男の目を引くFカップの巨乳とは裏腹に、とてもスマートで日本人離れしたボディライン。見た目だけではなく、積極的な性格ときめ細やかな仕事でめきめきと成績を伸ばす陽美は、入社数年で社内でも名の知れたキャリアウーマンになっていた。博隆とは入社年次がたった数年しか違わないにもかかわらず、彼のOJTを一任されることになったのも、彼女の優秀さの証と言って良いだろう。


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少しまじめすぎるきらいはあるものの、陽美は性格がまっすぐで面倒見のいい、いわゆる姉御肌の女性だった。3歳しか年が違わない女性に部下として扱われると聞き、最初はいささか抵抗感を覚えていた博隆だったが、陽美と顔を合わせた瞬間、そんな気持ちは雲散霧消してしまった。陽美は公私にわたって博隆の信頼できる上司となり、彼の尊敬の念が恋愛感情に変わるまでに、たいして時間はかからなかった。

 

特に彼がしびれたのは、彼女にオフィスで命令されたり、叱咤されたりするときだった。たった3歳しか違わない女性に上司として上から命令され、少々おおげさにいえば「強制的に」従わせられる。決してそれはアブノーマルな状況ではなかったが、彼はそこにSM染みた甘美な悦びを感じてしまっていた。初めて書類上のミスをしでかし、終業後のオフィスで一対一できつくしかられているときなど、反省するふりをしながら密かにチンポをビンビンにさせていたほどである。倒錯した興奮。これを恋と表現すればいいのか、それとも「欲情」と表現すべきかは難しいところだが、とにかく陽美は彼にとって、憧れの存在になっていたことだけは確かだった。

 

博隆は彼女の後ろに影のように付き従い、「藤堂さんに認められたい」との一心で仕事に打ち込んでいった。ミスをすることもままあったが、その年の新入社員の中では、博隆はすくなくともかなり出来の良い方に入っていたといえるだろう。あわよくばプライベートでも陽美と親密になりたいという不純な動機があったことも否めなかったが、ともあれしゃにむに仕事に向かう彼のことを、陽美も日に日にパートナーとして認めるようになっていった。

 

「来週のプレゼンは重要だよ。頑張って準備してね。きっと園田くんならできるって」

 「どうして今更こういう書類が出てくるわけ?もうあなた新人じゃないでしょ?いますぐやり直しなさい!」

 「こないだの書類、課長がほめてたよ!見所があるってさ。やったじゃん」

 「今度の社内コンペ、いけるかもだって!園田君、本当に一人前になったね」

 

博隆は陽美の言葉を糧にどんどん成長し、入社して数年がたつ頃には、りっぱな主戦力として活躍するようになった。陽美との関係はいつのころからか上司と部下という枠を超え、社外では敬語を使わなくなるまでに進展。いくつかのプロジェクトを超えるたびに2人の距離は縮まり、3年目には対等な彼氏彼女として付き合うようになっていた。博隆が陽美にプロポーズしたのは、それからちょうど1年がたったころだった。幸福の絶頂。仕事もプライベートも、2人のあいだの全てがうまくいっていた。

 

新婚生活は、陽美が親の援助を受けながら独身時代に購入した2LDKの分譲マンションでスタートした。博隆は高校のときに両親を事故で亡くしていたため、陽美の籍に入ることにした。園田博隆から、藤堂博隆へ。愛する人の姓を得て、彼はこそばゆいような誇らしいような気持ちで、新たな人生の第一歩を踏み出した。

 

社内外から惜しまれながらの寿退職。

結婚からきっかり一年後の妊娠。

長女陽菜(ひな)の誕生。

 

思えば、このころが博隆、そして陽美の人生で最も幸せだったころに違いない。

 

 

* * *

 

 

それから数年。博隆が同じ課に所属する派遣の女性、美香と寝てしまったのは、本当にちょっとした出来心からだった。その女性からメールが来るようになったのは、初めての育児でストレスがたまっている陽美から逃げるように、彼が仕事に没頭していたころだ。

 

「ちょっとご相談があるんです。今夜ちょっと二人でお話できませんか?」

「本当に悩んでいて、藤堂さんにしか話せないんです。どうかお願いします!」

 

美香から送られてきたそんな他愛もない文面で、博隆はかんたんにおびき出されてしまった。美香は男好きのする幼い顔立ちをした女性で、酒の席などで男性社員にべたべたと甘えるようなしぐさをするため、他の派遣女性からは「サセ子」と揶揄されてひどく嫌われていた。実際、彼女は様々な派遣先で好みの男性を見つけては誘惑し、社内で問題を起こしては転職を繰り返しているトラブルメーカーであった。

博隆を社外に呼び出した彼女は、同僚からのいじめに悩んでいることを切々と訴えたが、もちろんそれは博隆を誘い出す単なる口実に過ぎなかった。そのころ頭角をあらわしてきていた博隆を美香は以前から気に入っており、すぐになりふり構わず彼を誘惑するようになった。高校以降はいじめられなくなったものの、もともと女性経験があまり豊富でなかった博隆は、あっさりとその手練手管に引っかかった。初めはさりげなかった美香のボディタッチはどんどん露骨になり、最終的にはスラックスの上から股間に手を伸ばすほどのいやらしい触り方に。簡単に誘惑された博隆は会社帰りに毎日のように美香と会うようになり、帰宅時間は日に日に遅くなっていった。

陽美が帰りが遅いことを咎めると、彼はいっそう家庭を寄り付きがたく感じて、逆に美香にのめりこむという悪循環。夫婦の溝が深まる一方で、秘密の逢瀬は重なり、2人が肉体関係を結ぶまでにほとんど時間はかからなかった。

 

博隆は陽美のことを心から愛していたので、この女性との関係はただの息抜きに過ぎないと思っていた。陽菜を産んでから、陽美はあまり以前のように情熱的に博隆を誘うこともなくなっていた。退屈な家庭から抜け出して、ひとときの刺激を求めていたというのも浮気に走った一因と言える。彼は風俗に行ったことのない、いわゆる玄人童貞だったが、もしも彼がそうした遊びを覚えていれば、こんな女にひっかかることもなかったかもしれない。

 

しかし、その蜜月は長くは続かなかった。独身時代に味わえなかった、ちょっとした火遊び。そんなふうに軽く思っていたのが、結局「運のつき」だったのだ。

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