僕には大学時代にゼミで一緒だった、四宮綾香(しのみやあやか)という彼女がいました。綾香は大人しくて恥ずかしがり屋で、ゼミの飲み会とかでもあんまりしゃべらないタイプでした。髪の毛は肩くらいまでの長さで、サラサラの黒ストレート。講義のときだけ小さなメガネをかけていて、それがとても似合っていたのが印象的でした。
綾香は同年代の女の子の中でも体が小柄なほうで、いかにも高校の図書室にいそうな文学系美少女タイプでした。もちろん大学でも密かに狙っている男はたくさんいたので、大学3年のときに僕たちが付き合ったといううわさが流れると、ゼミやサークルのみんなにはすごくうらやましがられたものです。しばらくのあいだ「もうヤったのか」とか「四宮のおっぱいは最高だったろ」なんて聞かれたりして、僕は有頂天になっていました。
とはいえ綾香はものすごく奥手で、初めてエッチをするまで半年ぐらいかかったと思います。友人にもよく聞かれた胸の大きさですが、まあ普通より少し大きいくらい。ただ、脱がせると肌はめちゃくちゃ綺麗だし腰もほっそりとしてるし、おっぱいの形もとてもきれいで、アイドルみたいな体型の子でした。綾香は恥ずかしがりな性格のせいか、Hはあんまり好きではない様子でした。フェラとかも風呂に入った直後でないと絶対にしてくれず、彼女のそういうところには不満がありましたが、「こんなきれいな子が付き合ってくれるんだから」と納得して、おいおいそのあたりは開発していけたらなあなんて考えていました。
意外なことですが、綾香は大学に入る前から新聞の政治記者を目指していて、大学でもジャーナリズム論とかの講義を沢山取って一生懸命勉強していました。初めての人と話すのも苦手な性格なのに大丈夫かなと僕は思っていましたが、彼女は本気でした。この不況で僕は正直なところひとつも内定が取れず、かといって就職浪人する気合いもなく、なんとなく卒業してフリーターになったのですが、彼女は就職浪人をして勉強を続け、大手新聞社の内定をついに手にしたのです。
僕らは大学4年生のときにお互いの親を紹介して、卒業後は早い時期に結婚することを約束しており、当時は都内のアパートで同棲中でした。ぼくは彼女より一足先に卒業してしまったので、アルバイトをして彼女の就職活動を支えながら、励まし合って生活していたものです。その甲斐あってのことだったので、内定の連絡が彼女の携帯電話に来たときは、僕も彼女も大泣きして喜び合ったのを覚えています。彼女も夢が叶ったと大はしゃぎでした。毎日アパートで綾香と過ごせて、大学生にしては控えめなHでしたが毎晩彼女を抱くこともできて、あのころは本当に幸せな日々だったといまは思います。
しかし、綾香との生活は、彼女の就職を機に全く変わってしまいました。彼女は政治部への配属を熱望していたのですが、最初に彼女が配属されたのは警察担当、いわゆる「サツ回り」と呼ばれる部署だったのです。心配するぼくに「同期の半分は警察担当になるんだから仕方ないよ」と彼女は力なく笑っていましたが、4月から始まったのは、想像していたようなマスコミらしい華麗な生活とはほど遠い、限りなく泥臭い生活だったようです。朝は日が昇る前から警察幹部や捜査員の家に行き、出勤する彼らから少しでも情報を引き出し、昼はいろいろな現場をかけずり回り、夜も警察関係者の家で張り込みをしては、帰ってきたところを捕まえて事件の進行を聞く。いわゆる「夜撃ち朝駈け」の日々が始まりました。
最初は彼女も気丈に堪えていましたが、数ヶ月たつと、夜おそくに帰ってきては「刑事さんには無視されるし、毎日上司にも怒鳴られる」「同僚も警察官もスパスパ煙草を吸うから、体に臭いが染みついて嫌だ」とアパートで僕に愚痴ったり、小さな体を震わせてしくしく泣いたりするようになりました。僕もなんとか彼女を支えてあげようと頑張り、週末は気分転換にデートでもしようと誘ったりしたのですが、彼女の持たされた社用携帯には、休日だろうと容赦なく呼び出しがかかります。彼女はそのたび「ごめんね、ごめんね」と何度も謝って、僕を置いて事件現場へと駆けていくのでした。そんな無情な生活が、それから何ヶ月も続きました。夜遅く帰ってくる綾香は体力的にも精神的にも疲れている様子で、以前は毎晩のようにしていたHもだんだんと回数が減ってくるようになりました。
先ほど綾香との生活が変わってしまったと書きましたが、本当に彼女が変わってしまったのは、就職して2年目の春を迎えるころでした。僕は相変わらずその日暮らしのフリーター生活を送っていましたが、そのころから彼女は次第に「特ダネ」をつかんでくるようになったのです。「○○殺人事件、容疑者逮捕へ」「脱税容疑、会社を捜索」といった彼女の記事が紙面を賑わせるようになり、ぼくはとても喜びました。綾香が書いたという大事件の特ダネ記事が紙面を飾ったときは、僕も「すごいすごい」と興奮して褒めまくったのですが、そのとき彼女はあまり嬉しそうではなく、「うん…ありがとう」と言ってうつむいていました。照れているのかなと思っていましたが、僕はそのとき、全く彼女の様子がおかしいことに気づきませんでした。今思えば、あのときが彼女を僕の元に取り戻せる最後のチャンスだったのかもしれません。彼女が記者として優秀になるに従って、もともとずれていた僕たちの生活は本格的にすれちがうようになってしまいました。
僕が寝るよりあとに彼女は帰り、僕が起きる前に彼女は出掛けるという滅茶苦茶な生活が毎日続きました。週末も彼女はアパートにおらず、いろんなところをかけずり回っているようでした。2年目の秋ごろには、それに加えて週に2度ほど、「警察での泊まり勤務」といって一晩中帰らない日すら入るようになりました。それまで何とか週1度はしていたセックスも、彼女が帰らなくなったころから完全に拒否されるようになりました。久しぶりにアパートに帰ってきた彼女を抱きしめても、「疲れてるから」「生理だから」とすげなく断られ、キスもしてくれずにそのまま寝てしまいます。Hはできなくてもせめて彼女を抱いて寝ようと思い、彼女の布団にもぐりこんだことがあります。そのとき、昔は清潔なシャンプーのにおいがした彼女の髪から、いまは煙草の臭いが漂うようになっていることに気付いて、とても悲しくなりました。僕も彼女も煙草は大嫌いでしたから、なんだか彼女が遠くにいってしまった気がして、胸が痛んだのでしょう。
アパートに寄り付かなくなった彼女に僕が怒って、喧嘩になったこともありました。
「あのさ、仕事が大変なのもわかるけど、もっと早く帰って来れないの?これじゃあ結婚もいつになるかわからないし……」
「はあ?結婚できないのはヒロくん(ぼくです)がいつまでもプラプラしてるからでしょ?結婚資金貯めるとか言って、アルバイトもすぐ辞めて。口ばっかりじゃん」
「それはそうだけど……でも、こんなにすれ違ってたら結婚なんか……」
「あたしは一生懸命仕事してるもん。警察担当で沢山特ダネ取ったら、次はなりたかった政治担当になれるかもしれないし。ヒロくんは帰ってきて欲しいっていうけど、あたしと…したいだけじゃないの?」
「そ、それもあるけど、だって…」
「最低。自分は働かないし、朝も寝てばっかりだし。……あたし、明日早いからもう寝るね。朝から記者会見2本入ってるから」
ベッドに横になろうとする彼女の肩に手をかけようとしましたが、冷たく振り払われるばかり。とてもショックでした。大人しい彼女がこんなふうに僕をけなすことはそれまでありませんでしたが、彼女の言うことももっともだと思い、そのときはぐっと我慢して自分を納得させました。僕には綾香のような激務の生活は絶対に無理でしたから。綾香とはそれからしばらくして仲直りし、一度アパートでHもしましたが、彼女はそのあいだずっと心ここにあらずといった様子でした。
ぼくが挿入から5分ほどで射精すると、「……え?もう終わったの?」と意外そうに呟かれて、ひどく恥ずかしくなりました。僕が乳首を愛撫しても、挿入しても、彼女はぴくりとも感じてくれず、ただ一生懸命腰を振る僕を見つめて、困ったような、憐れむような表情を浮かべるばかり。射精してしぼんだ僕のペニスを見る彼女の視線も、どこか見下しているように感じてしまったのを覚えています。正直あまり自分の下半身に自信が無かったぼくは、どうしても恥ずかしさが先に立ってしまい、それを最後に彼女と体を重ねることはなくなりました。
体が離れると、心も離れてしまうのでしょうか…。ときおり僕に笑顔をかけてくれることもありましたが、綾香とキスをしたり、手をつないだりすることも、そのころからほとんどなくなってしまいました。でもそれから数日がたって、彼女のバッグに「あるもの」が入っているのを見つけて、僕は愕然とすることになります。
今から思えば、あれが初めて彼女の浮気を疑うことになったきっかけの日でした。綾香から珍しくアパートに電話があり「家に忘れたバッグの中から手帳を持って来てほしい」ということづてがあったのだと覚えています。「綾香が仕事道具を忘れるなんて珍しいな」と思いながらバッグの中を調べていると、何かの拍子にころりと小さなピンク色のポーチが落ちてきました。僕がそれを開けたのには、特に理由はありませんでした。本当に何の気なしに、だったのです。ポーチのジッパーを開け、逆さに振って中から落ちてきたものを見て、僕は言葉をなくしました。ポーチからばさばさと転がり出てきたのは、大量のコンドームの束だったのです。5枚綴りになっているそれには、何枚かすでに使用した形跡もありました。僕は必死に記憶を検索しましたが、僕が彼女と最後にセックスしたのは半年近く前でしたし、昔から彼女は恥ずかしがって、決して自分でコンドームを買うことはありませんでした。
綾香は僕に隠れて、他の誰かとセックスしている。それも、何度も何度も。僕は愕然として、吐き気がするのをひたすら我慢しながら、がたがたとしばらく震えていました。
それから数日、僕は「綾香は誰と浮気しているのか」と、一人で悩み続けました。同僚だろうか、それとも仕事相手だろうか。大学の仲間がちょっかいを出したのかもしれない。疑いはどんどんと募りましたが、結局誰にも相談できず、悶々としていました。浮気された人たちの体験談をネットで読んだりもしましたが、けっきょく3日かけて僕がたどり着いたのは、「彼女の携帯を盗み見る」という月並みな結論でした。
しばらく何も知らない顔をして機会を伺っていましたが、ある日ようやくチャンスがめぐってきました。彼女がいつもより早めに帰ってきて、そのままぐっすりと寝入ってくれたのです。普段彼女は、仕事用の携帯がいつ鳴っても起きられるよう手にしっかりとにぎって眠るのですが、その日は疲れていたのか、テーブルの上に置きっぱなしになっていました。当時はまだスマートフォンなどは普及しておらず、綾香の仕事携帯も、ドコモの普通のガラケーでした。しめたとばかりに手に取ったのですが、残念ながらその携帯には他人には操作ができないよう、4けたのナンバーロックがかかっていました。メール画面どころか、最初のメニュー画面や壁紙画面にすらいかないよう、灰色の画面が表示されるのです。「1234」や「0000」、僕の誕生日「0415」、綾香の誕生日「1224」(クリスマスイブ生まれでした)などを試してみましたが、いっこうに解除される様子はありません。覚悟を決めて、「0000」から一つ一つ番号を試していくことにしました。息を潜めてキーを押していきます。綾香が起きないかヒヤヒヤしながら、100を過ぎ、200を過ぎ……。時計の秒針がカチカチと鳴る中、「0214」と入力したとき、ふいに画面のロックが外れました。
2月14日。バレンタインデーでしょうか。
とにかくこれで、この携帯を操作することができます。ぼくは意気揚々と「クリア」のキーを押しました。思えば、まさにこのときが、僕の幸せが粉砕されたときだったのです。
「えっ…!!」
ぼくは何の前置きもなく画面に表れた写真を見て、言葉を失いました。携帯のディスプレイには、僕の可愛い婚約者が写っていました。その小さな口いっぱいに、誰かの勃起したペニスを…喉の奥までくわえ込んで。見覚えのないどこかの風呂場で、綾香がべろべろと舌を回して知らない男のザーメンをすすっているその写真を見て、ぼくはがらがらと何かが崩れる音を聞いた気がしていました。
(ほんとに…これは綾香なのか…?こんなにうっとりした顔で、男の股間に顔をうずめてる女が…)
じわじわと脇や額に脂汗が浮かび、心臓の鼓動が早まります。ごくりとツバを飲み込むと、僕はひとつひとつ、隠されていたメールや画像フォルダをのぞいていきました。そっけなく「カメラ画像」とだけ書かれたフォルダからは出るわ出るわ……。綾香が僕以外の男のペニスをいかにも美味しそうに笑顔を浮かべてフェラチオしている写真や、綾香の乳房のアップの写真。頭の後ろに両手をやり、下品極まりないがにまた姿でアソコを広げて見せている写真。正常位で犯されながら、笑顔で両手ピースしている写真。セーラー服を着てオナニーしている写真。犬用のリードのついた首輪をはめて、舌をのばして男の足をなめている写真……そんなものが百枚あまりも保存されていました。
その一枚一枚を、僕は涙でにじむ目で凝視し、確認したのです。気が狂ってしまいそうでした。
僕は吐きそうになりながら、涙目で携帯を操作していきました。フォルダの中には卑猥な写真だけでなく、ぼくの知らない部屋の窓際で、裸の綾香がさも美味しそうに煙草を吸っている写真までありました。煙草のにおいがつくことすら嫌がっていた彼女が…。
画像に残されている撮影履歴を見てみると、最初にこんな写真が撮られていたのは半年前の2月14日、バレンタインデーの夜でした。記憶をたどってみると、その日はアパートでささやかなお祝いをしようと約束して、チョコレートケーキを買って彼女を待っていた日だったと思います。朝出るときは「頑張って仕事終わらせて、早めに帰るね」と言っていたのですが、夜中の0時を回っても綾香は帰ってきませんでした。夜1時ごろに「事件が入っちゃったから帰れない。ごめんね」と電話が掛かってきて、僕は一人寂しく夜を過ごしたのでした。何度か電話を掛けなおしましたが、電源が切られており、綾香は最後まで出てくれなかったのです。
考えてみると、ちょうどあのころを境に彼女の帰りは遅くなり、朝帰りも増えたように思えました。バレンタイン…この日が、彼女がぼくを裏切った最初の日だったのでしょうか。その日の写真をあらためて見てみましたが、確かに、他の写真とはどこか雰囲気が違っています。怯えたような表情で勃起した誰かのペニスを手にしている綾香、こちらにひきつった笑顔を向けながら犯されている綾香、いかにも嫌そうに男の巨根を咥えこみながら、ピースサインをしている綾香――。ぼく以外の男とのセックスを心から楽しんでいる様子の他の写真とは、何かが違っているのです。
(綾香は誰かに脅されてたのかもしれない。もしかしたら今も、写真でゆすられて性行為を強要されているのかも…)
都合のいい思いつきかもしれませんが、写真を見た僕はそう考えるしかありませんでした。
しかしその考えは、メールボックスに残されていたやりとりで、すぐに粉砕されてしまうことになります。
彼女のメールの相手は、ほとんどが名前のうしろに「○○署副署長」や「捜査○課係長」などと書かれていました。中には会社の上司とみられる相手もいましたが、おそらく8割以上が警察官と思われました。その内容は、目を覆いたくなるようなものばかり。
「今日も楽しかったぞ。綾香はどんどんお掃除フェラがうまくなるな。明日は前から言ってたケツ穴セックスだ。ケツでもきちんとイケるようになったら、今度の家宅捜索のネタをやるからな。高校の制服でハメ撮りするから、ローションと一緒にちゃんと持って来るんだぞ」
「綾香、今日は何時に来る?チンポをビンビンにして待ってるぞ。今日は彼氏のことを忘れて一晩中ヤリまくろうな。いつもの首輪をもってこいよ」
「今日の綾たんのおしゃぶり写真を送りまーす。俺のザーメンで顔ドロドロだねw最初のころと違って、綾たんの手コキもイラマチオもとっても上手になったよ。記者やめてもいつでも風俗嬢になれるねww」
「今山岡署の刑事課にいます。2Fのトイレにいるからしゃぶりにきてください笑。可愛い綾香のことを考えていたら、ザーメンがたまっちまって仕事になりません。もちろんお土産は用意してありますから」
「今日の写真はちゃんと壁紙にしておけよ。ちゃんとあとで抜き打ちチェックするからな。寂しくなったら写真を見ながら俺のチンポを思い出して、こないだ買ってやった極太バイブでオナニーするんだぞ」
さまざまな部署の刑事や警部や警部補や巡査から、こんな内容の卑猥なメールが毎日のように送られていました。これだけでも僕は頭が真っ白になり、死にそうなほど鬱になりましたが、送信ボックスの中身はもっともっと最悪だったのです。
「榊原課長、今日もとっても気持ちよかったです。課長のペニス、最初はおっきすぎると思ったけどいまでは毎日ハメてもらわないと元気が出ないの。今度も特ダネとおっきなチンポ、綾香に下さいね」
「あーんごめんなさい、今晩は吉田さんのところ行けないんです。鑑識課長がどうしても今日は綾香を犯したいってメールしてきて…。来週高校のときのセーラー服でたっぷりサービスしますから、今夜は許してね。でもあんまりあたしとホテルに行きすぎると奥さんにバレちゃいますよ~?^^」
「やだあ、恥ずかしい写真いっぱい撮られちゃって恥ずかしいです……。坂原さん、いっつもハメながらあたしの顔とるから嫌い笑でもなんだか興奮してちょっと濡らしちゃいました♪また綾香のえっちな写真たくさんとって下さいね」
「課長の言うとおり、ロック番号は初めて記念のバレンタインデーにしました。課長に初めて女にしてもらえて、綾香は幸せです♪ロック番号を入れるたびに課長のセックスを思い出してどきどきしちゃいます。今夜は何時にお帰りですか?いつもみたいにお家の近くで待ってますね♪」
「もちろん今日もノーパンノーブラでお仕事しました。だって課長のご命令なんだもん♪現場でかがんだときにFテレの木下さんにノーブラなのバレちゃったんですけど、今度野外フェラするから秘密にしてってお願いしましたぁ」
「なんだか最近おしゃぶりが上手になった気がします笑課長のおっきなチンポもいつでもすぐイカせられますよ?えへへ。なんだか課長とエッチメールしてたらお口が寂しくなってきちゃった。今夜もいっぱいブチ込んで下さいね♪」
あの引っ込み思案な綾香が、ぼくの知らない所でこんなメールをやりとりしているなんて、とても信じられません。僕に嘘をついて、何人もの男たちの慰みものになっているなんて。物凄く鬱なのに、僕のチンポは淫乱極まりない綾香の言葉遣いに興奮して、かつてないほどビンビンになっています。メールの中には、ところどころ僕のことを書いたメールもありました。
「彼氏の誕生日なんだって?じゃあうちで朝までセックスだな。彼氏とケーキ食うより、俺の極太を下のお口で食べたいだろ?」
「やだあ、さすがにバレちゃいますよー。家で夕飯用意して待ってるのに」
「情けない男だな。専業主夫気取りか?そんな男のことより、今日はいい事件のネタがあるぞ?綾はそいつの料理と俺のチンポとどっちがいい?」
「もう、しょうがないなあ~。彼氏の料理なんかより、もちろんあやかは課長のおチンポ様が大好物です♪」
「いい子だ。いつもどおり下着は穿かないで来るんだぞ」
こんなやりとりも記録されていました。日付は間違いなく、僕の誕生日です。その男とのやりとりの直後、「ごめん、先輩に命令されて遅くまで仕事しないといけなくなっちゃった。ごはん先に食べててね」という僕宛のメール履歴が残っていました。彼氏、いや、婚約者よりも、こんな下品な男を綾香は優先していたのです。僕はチンポを勃起させたまま、トイレで一度吐きました。そして、声を抑えて泣きました。
綾香は特ダネ欲しさに、夜回りと称して、刑事たち相手に体を売っていたのです。いや、夜だけではありません。色々な現場で、警察施設内で、綾香はいつでもメールで便利に呼び出されては、男たちの欲望の捌け口となっていたのです。写真を撮られ、コスチュームや性具まで用意させられて。まさに娼婦や性処理道具といっていい扱いでした。さきほどのバッグを念入りに漁ってみると、底の方からは思ったとおり、袋に入ったピンクローターやらバイブやらがごろごろと転がりだしました。替えの電池までが転がりだしたのには、本当にショックを受けました。挙句の果てには、ドロドロした液体で汚れた、アソコのところだけ穴の開いた卑猥な下着まで。綾香は決して、こんなものを僕の前で着たことはありませんでした……。
僕はこのバッグに入っているのは、記者の大切な仕事道具だと思っていました。これではまるで、いつでも呼び出しに応じるデリヘル嬢の商売道具入れのようです。僕は寝入っている綾香のよこでぺたんと座り込み、声をひそめて泣きました。綾香の可愛い寝顔を見ていると、
「こんなに純真な顔をしているのに、この子は俺に嘘をついて、俺以外のチンポを何本もくわえこんでいるんだ……」
と思えてしまい、どんどん涙が出て止まりませんでした。
その夜は、僕はバレないよう携帯やバッグの位置をきれいに直して、我慢して寝ました。こんな日に絶対に寝れるわけがないと思いましたが、横になったとたんどっと疲れが出て、いつのまにか寝入ってしまったようです。夜が明けて僕が起きたときには、綾香はいつものようにもう出掛けたあとでした。
綾香の浮気を確信した僕は、どうしても彼女の浮気現場を押さえたくなりました。まだ結婚していないとはいえ、彼女は僕の大切な婚約者です。僕が大事に大事に扱ってきた宝物です。それを性欲処理の風俗嬢のように扱った男たちのことは、僕はぜったいに許せませんでした。
綾香が一番メールを交わしていたのは「榊原課長」という男でした。半年前のバレンタインの夜に会っていたのも、誕生日の日に綾香を呼び出したのもこいつです。最初の写真をネタにして、この卑劣な男が彼女をゆすり、自分たちの性欲処理をするよう強要したに違いありません。彼女を待って、一人で過ごしたバレンタインデーの夜。彼らはあれから毎日のように、僕の誕生日ですらも、嫌がる綾香を好き放題に犯し、そのたびに「記念写真」を撮影していたのです。
(絶対にその証拠をつかんで、訴えてやる)
僕は、暗い復讐心に燃えていました。彼らをどん底に突き落とし、僕が感じた以上の屈辱を与えてやる。そのとき、僕の頭にはそれしかありませんでした。綾香はいまも僕のことを愛してくれている。こんなことをさせられているのは、この男が卑劣な手で脅しているからなんだと、そう信じるしかありませんでした。
「もしも、綾香が自分から望んで享楽に耽っていたとしたら…」
そんなことを考えたら、精神が完全に壊れてしまいそうだったのです。10日後の金曜の夜、僕はついに作戦を決行しました。最近はほとんど僕とも会話を交わしてくれなくなった彼女が、「今夜は泊まりだから」と言って出掛けた夜です。僕はあれから何度かメールを盗み見て、彼女がこのところ詰めている警察署がどこか特定していたので、夕方あたりからそこで待つことにしました。念の為、ニット帽にサングラスを掛け、彼女が見たことのない服をユニクロで買って、全身きっちりと変装してからの出発です。
日が暮れて夜7時ごろ、ようやく彼女が署を出てきました。いつもの地味めなパンツスーツにブラウス姿。何が入っているのか、やや膨らんだ「あのバッグ」を肩から提げ、彼女はそのまま駅の方向に向かっていきます。僕は帽子を深くかぶり直し、急いで尾行しました。綾香は最寄りの駅に入ると、改札内の女性トイレに入っていきました。トイレの出入り口が見える位置で待っていましたが、用を足すのかと思いきや、10分経っても出てきません。一体何をしているのでしょう。いぶかしんでいたそのとき、あでやかな格好をした一人の女性が、トイレから出てきました。つやつやとした黒のハイヒールに、大きくスリットの入った同色のワンピース。耳には金色のイヤリングが光っています。ほっそりとした足には模様の入ったセクシーな黒ストッキングを履いており、道行く男性が好色そうな目線をちらちらと向けているのがここからでもわかりました。
僕はしばらく自分の目を疑い、まじまじとその女性の顔に目をこらしましたが、間違いありませんでした。すっかり美しく変身していましたが、その女性は間違いなく僕の婚約者、綾香だったのです。化粧もふだんの自然な感じとはほど遠く、より水商売風の派手なものに変わっていました。小柄な綾香にはそうした格好は似合わないと思っていましたが、ギャップから来る色気というのでしょうか…アクセサリーをきらめかせて颯爽と歩く彼女からは、今までに感じたことのない淫靡な雰囲気が漂っていました。彼女は持っていたショルダーバッグを駅のロッカーに預けると、カツカツとヒールを鳴らして歩いていきます。中には先ほどまで着ていたスーツが入っているのでしょうか。慌てて僕は跡を追いましたが、頭の中ではこれはどういうことなのかと混乱していました。これから夜回りにいくので、彼女は僕と同じように変装をしたのでしょうか。それとも、考えたくないことですが――あの姿は刑事たちの下心を刺激して、少しでも楽しく犯して頂くための、彼女なりの「オプションサービス」だったのでしょうか……。
彼女はそこから電車で30分ほどの駅に移動すると、住宅街へと歩いていきました。あたりは既にとっぷりと日が落ちて、電灯がなければ真っ暗です。さすがに夜8時前ですから人通りはありましたが、僕は彼女に尾行がばれないように、念のため数十メートルは離れてついていきました。10分程歩いたでしょうか。彼女はある2階建ての一軒家に着きました。こぎれいな家で、高級外車が1台、前に停まっています。木で出来た立派な表札には、「榊原」の二文字。間違いありません、僕が殺したいほど憎んでいる「奴」の家でした。
顔を見られるとまずいので、僕は1ブロック先の角からわずかに身を乗り出して、綾香の動向をのぞいています。彼女が戸口でインターホンを鳴らすと、中からいかにも好色そうな親爺が出てきました。上下グレーのトレーナー姿で、だらしない感じ。頭はうっすらと禿げて、腹はでっぷりと出ています。ただ目つきだけが鋭く、ぎょろぎょろとしていました。彼があの「榊原課長」なのでしょう。そして…ああ、なんということでしょう。綾香は彼の顔をみると嬉しそうに駆け出し、玄関先で彼に抱きつきました。それにもショックでしたが、その上彼女は「榊原」の腰にいやらしく手を回し、背伸びをして奴の口に自分からキスをしたのです。時間にして3秒ほど、るろるろと舌をからめるディープキスを楽しむと、奴は僕の綾香の腰に気安く腕を回し、恋人のようにくっついて部屋の中に消えていきました。
たった10秒あまりの出来事でしたが、まるで僕にとっては悪夢のようでした。2人の姿がドアの向こうに消える直前、僕は見てしまったのです。「榊原」に腰を抱かれた綾香が、その細い指を伸ばして――彼の股間のふくらみを、愛しげにズボンの上から愛撫しているのを。
それからのことはあまり思い出したくありません。僕はしばらく出て行けませんでしたが、ついに我慢できずに駆け出して、榊原邸の裏に回りました。裏側はマンションになっていましたが、敷地内を横切って入っていくと、家の間際まで寄っていくことができます。
「これは犯罪だ。立派な不法侵入だ」
「榊原はただの警察官でなく、かなりの幹部だぞ。気づかれたら大変なことになる」
「ひょっとしたら赤外線センサーだって設置しているかもしれない。すぐに警官が大勢やってくるかも…」
そんな考えも頭をよぎりましたが、そのときの僕は無我夢中で、自分の行動を止めることが出来ませんでした。垣根やボイラー器具のあいだを身をよじって「侵入」していきます。しばらく進むと灯りの付いた掃き出し窓が見えました。カーテンがかかっていますが、ごくわずかに中をのぞくすき間がありそうでした。僕は完全に息をとめ、じりじりと一歩ずつ、忍び足で窓ににじり寄っていきます。
(ぱん、ぱん、ぱん……)
窓まであと1メートルほどに迫った、そのときでした。手と手をリズミカルに打ち合わせているような不審な音と、耐え難い苦痛を与えられているような女性の悲鳴が、僕の耳に飛び込んできたのです。一瞬いぶかしんだ僕でしたが、すぐにその音の正体に気づきました。部屋の中から外にまで聞こえてきたのは、肉のぶつかりあういやらしい音と、僕の婚約者の、いままで聞いたことがないほど艶めかしい嬌声だったのです……。
「あんっ!やんっ!課長、課長~っ!綾香のおまんこ、また広がっちゃう!やんやんっ!変態ぃっ!ああんっ!」
パン!パン!パン!パン!
「綾香のマンコは俺のものだから、俺のサイズにしてやるんだよ。オラ、もっとケツを使えと教えただろうが!」
「ああん、ごめんなさい……うふっ、こうですかぁ……?やぁん、中でこすれてすっごい気持ちいいっ」
「二人のときはちゃんと名前で呼べよ……妻とはもう離婚したんだから、もう好きなだけ家でセックスできるぞ」
パンパンパンパン!
「やん♪あん、あんっ、英孝さ……あん……あっやだっ、止めちゃやだっ」
「ほら、ちゃんとオネダリしてみろ、綾香」
「ああん……綾香のぉ……綾香のキツキツおまんこを、英孝さんの極太チンポでぇ、いっぱい広げて下さいっ♪」
「ふふふ、可愛いぞ、もっと言うんだ……」
「綾香はダメな彼氏と別れて英孝さんの愛人になりますぅ♪毎晩好きなだけ綾香のおまんこ調教して、すけべな女の子に改造して下さい……ンおおおっ!あっはあああン!あん!ああっ!嫌っ!気持ちいい――ッ!」
パンッパンッパンッパンッ!
「オラッ!綾香、あっちのビデオで撮ってるぞ!カメラ目線でケツを動かしてみろっ!」
「あん、あん、あああああんっ!気持ちいいです!気持ちイイですうっ!バックで犯されてるやらしい綾香を見て!いっぱいオナニーしてえっ!」
室内から聞こえてきたのは、そんな最悪な会話でした。僕は息を潜めながら、目に涙があふれてくるのと同時に、強烈に勃起しているのを感じました。僕の綾香が、いますぐそこで汚いスケベオヤジに犯されています。僕が望んでいたような、仕事をタテに脅されているような雰囲気は、そこには全くありませんでした。カーテンの裾の下からのぞくと、すぐ数メートル先で綾香が犯されているのがわかりました。先ほどの男が全裸になって、バックから綾香の小さなお尻を押さえつけ、ガンガンと乱暴に腰を動かしています。男の浅黒い肌に比べて、シミ一つない綾香の肌がとても白く美しく見えました。ショックなのは、綾香も彼の律動のタイミングに合わせて、あたかも彼のチンポを喜ばせるように腰を打ち付け、快感を誘っているような動きをしていたことでした。僕とのセックスでは、彼女があんなことをすることはなかったのに。そもそも、正常位以外で僕とつながったことなどなかったのに……。
無理な体勢でなんとかのぞき込むと、部屋の一角には小学生の運動会に並んでいるようなカメラセットが設置され、セックスの一部始終を録画しているようでした。綾香はそちらを向き、嬉しそうにピースサインを送りながら、一心不乱にケツを振って「榊原」に奉仕しているのでした。よく見ると、綾香はさきほどの艶めかしいデザインのワンピースを着ていません。そのワンピースは、僕の数メートル先の床に、無造作に落ちています。でも、彼女は何かスカートのある服を身につけている様子でした。姿勢を変え、目をこらして、綾香が今着ている服が何かわかったとき、僕はつぶやいていました。
「ああ……嘘だ……」
彼女が着ているのは、大学時代に彼女が所属していたチアガールのサークル衣装だったのです。黄色のベースに紫のラインが入った、ミニスカートの衣装。その下には、もちろん下着は着けていません。綾香はあれほど大切にしていたチアの衣装を身につけたまま、スカートを乱暴にめくりあげられ、醜い裸の親爺に好き勝手におまんこの感触を楽しまれているのでした。
あたりにはいまも、パンパンと肉同士が当たる生々しい音が響いています。僕は大学時代、何度か彼女の演技を見に行こうとしましたが、恥ずかしがりだった彼女は「ヒロ君は絶対に来ないで!」と顔を真っ赤にして怒ってしまいました。一度、せめて家で着て見せてくれと言ったこともありましたが、「大事な衣装だから、汚すといけないし」と言われてしまったので、ぼくはこれまでチア衣装を着ている綾香を見る機会はなかったのです。まさか、こんなところで、こんな形で目にすることになるとは。ぼくは爪が食い込むほど拳を握りしめて、「榊原」への殺意を強めました。絶対にこの汚い男を殺してやると、そのとき誓いました。
「オオッ!綾香、今日も中に射精すぞォっ!」
「えっ!だめっ!あん、あんッ!今日はだめな日なのっ!今日出されたら赤ちゃん出来ちゃうっ!ダメ、だめええっ!」
グポッ、グポッ…!
「ほっ、じゃあ辞めるか?ここで辞めてもいいんだぞ?」
「あん……やだあっ、止めちゃやだあ……ああん、だめえ……中で、中でもいいからぁ……止めないでえ……」
「中で何をしてもいいんだ?ちゃんとカメラに向けて言ってみろ」
「ひ、英孝さんにザーメン生射精されても……いいですう……」
「ほぉん?どうしていいんだ?自分でケツを動かしてるじゃないか」
「やだあ……意地悪しないでえ……うふっ、綾香はあ……英孝さんにいっぱい中だしして貰って、赤ちゃん孕んでも構いませんっ♪綾香を子宮まで犯して、英孝さんの愛人にしてください、っああああああああ~♪きた、きたああっ、チンポきたのおっ!」
パン!パン!パン!パン!
「うはは、俺のザーメンで子どもが出来たらどうするんだったかな?んん?」
「ああっ、ああんっ、いっま、いま、綾香が付き合っている、だっダメでグズなフリーターのっ!ヒロくんの、子どもってことにしま、すうう!ああん、もっと犯してえ!ヒロくんと偽装結婚して、英孝さんの赤ちゃん産ませて下さいっ!あっああああああああああイクッ!いくいくいくイクうっ!綾香イキます!あ、あり、ありがとうございますぅっ!」
「イクぞ、綾香っ!生だしするぞっ!ウオオオオオオッ!」
「いやああああああっ!気持ちいいっ!いっちゃうう!ああん、ああああんっ!」
どびゅ、どびゅうううううううううう!ビュグッ!ビュグ、ビュグッ!
そんなふうにして、彼らのセックスは終わったようでした。僕は部屋の外でその一部始終を聞きながら、途中からズボンを下ろしてオナニーをしてしまっていました。自分の彼女が犯されているすぐ横で、息を殺してするオナニーは最悪に屈辱的でしたが、同時に最高の快感をもたらしてくれました。そのかわり罪悪感はいつもの数倍で、自分の手の中に出た少量の精液を見ながら、僕は自殺したくなるほど、自分を軽蔑したものです。僕は中で犯されている小柄な女性の、婚約者なのです。どうして自分の愛する婚約者を他人の汚い親爺にいいように犯されて、その横でみじめにオナニーをしているのでしょうか。
榊原と綾香はまるで恋人同士のように抱き合い、長いディープキスを交わしていましたが、しばらくすると綾香は彼の前にひざまずき、ちゅうちゅうとそのペニスを吸い始めました。「よしよし、お掃除フェラも上手になってきたな」と榊原が話していたので、彼が綾香に教え込んだのでしょう。綾香は手を使わず、口だけで彼の陰茎をしゃぶっています。最後にちゅぽんっ!と音をたてて口からチンポを抜くと、綾香はティッシュでていねいに拭いてやっている様子でした。僕とのセックスとは大違いです。これがいつもの彼らの「セックス」なのでしょうか。
榊原と綾香はしばらくベッドに横たわり(僕のいる位置からはよく見えませんでしたが、その部屋はベッドルームのようでした)いちゃいちゃとしていました。年の差は優に20歳以上はあります。それなのに、そんな親爺にまるで恋人同士のように接している綾香に、僕は絶望しました。甘えるような声で仕事の「ネタ」をもらえるようせがんでいる綾香。彼女は男の汚い乳首をぺろぺろとなめながら、おねだりをしている様子です。僕はそんなことしてもらったことはありません。本当に鬱です。しばらく休憩したのちも、彼らの性交渉は続きました。僕と「2回戦」をしたことのない綾香が、何発も親爺とのセックスを楽しんでいる姿には本当にショックでしたし、そのたびに勃起してハァハァとのぞき込んでいる自分の情けなさにも嫌気がさしました。綾香はそれから2回、榊原に生で射精され、榊原の命じるままに汚いケツの穴まで丁寧に舐めさせられ、ベッドの上でがにまたになって尻を振らされるストリップのまねごとまでさせられ、頭をつかまれて犯される乱暴なフェラチオ(イラマチオというものだと僕はあとで知りました)で1回は口内に、1回は可愛い顔にドプドプと大量のザーメンを射精され、しかもその全てをビデオに撮影されていました。
結局その夜、僕は朝までそこに座っていました。オナニーは全部で3回しましたが、3回目には液体はほとんど出ませんでした。5回目の射精でも、大量のザーメンを綾香の顔にまき散らすことのできた「榊原」とは大違いです。精力ですら、僕はあの男に勝てないようでした。
そのあとのことは、ここに書いてもあんまり面白くないのでかいつまんで書きます。
僕は朝、綾香が出てくるまで待って、家から数10メートル離れたところで声をかけました。彼女はあのエッチなワンピースを着ていましたので、驚いてしどろもどろになっていましたが、僕が携帯を見たことを告げると、ついに観念したようでした。彼女が話したのはこんな内容でした。
* * *
ごめんね。ヒロくんには黙ってたんだけど、半年前のバレンタインデーのときに、さっきの課長とえっちしちゃったんだ。あのときは、次の日の朝に大きな事件がありそうだったんだけどね……他の会社はもう取材しおわってますって感じだったのに、あたしだけ何にもわかんなくて。上司にも「どうなってるんだ!出来損ない!カス!」ってめちゃくちゃ怒鳴られて、会社追い出されて。それでもう何にもわかんなくなって、気付いたらあの家の前にいたんだ。ピンポン押して、出てきた課長に土下座して。何回も何回も教えて下さい、お願いしますって言った。そしたらいきなり課長に、「今晩寝てくれたらネタをやる」って言われたの。それが最初。
それまでは、ほんとに浮気とかしたことなかったよ。いまも、ヒロくんのこと、好きだよ。
そのときはフェラしてる写真とか、セックスしてるとこの写真もたくさん撮られた。「ピースしろ、それが強姦じゃない証拠になるから」って言われたの覚えてる。ああ、この人は警察官なんだなあ、でもこんなことするんだなあって、そう思った。それから、ネタが取れないときは課長にセックスしてくださいってお願いしにいくようになって……。
それからは、仕事がほんとに簡単になった。いろんな刑事さんの家にいってね、玄関先でノーパンでスカートめくるの。そうすると、ほとんど何にも言わずに中入れてくれて、一回したら、何でも教えてくれるんだ。他の新聞社の同期の子たちも、こういうのみんなやってるみたい。この国のマスコミじゃそれが「普通」で、ずっと昔からそれが続いてたんだって。この国の特ダネって、全部そうやって取ってきてるんだって。裸で土下座させられて靴の裏なめさせられて、それから「ありがとうございますありがとうございます」って何回も言わされながら玄関で犯されたこともあった。その刑事さんに「よくやるよな、絶対俺の娘はマスコミに入れないわ」って笑われて、すごく悲しかった。記者になるの、夢だったから。
毎日特ダネとって、それまでが地獄だったから、夢みたいだった。でも、すぐに上司には何であたしがネタ取ってくるか、わかったみたい。課長からあの日の写真をどうやってか貰ってきてね、「これは内規問題になる。バラされたくなかったら、今夜から俺の家にも来い」って。それからは夜回りの先がどんどん増えたよ。あたし、会社の記者クラブでも毎日犯されてるんだ。記者の仕事なんてほとんどやってない。ベテランの先輩記者が帰ってくると、クラブで体操服とか、スクール水着とか、そういう格好で待ってるの。それで、1000円とか貰って、やらしい台詞言わされながらフェラしたり、おまんこに指入れられたり。1000円でもちゃんとお金貰ってるから、これもあたしの有責売春になって、強姦罪にならないんだって。あは、みんな事件のプロだから、何でも知ってるよね。100円で生中だしされたこともあるよ。……ヒロくんも久しぶりにする?
* * *
綾香はいつもと変わらない普通の顔をして、そんな話をしました。僕は黙って、全部聞いていました。初めのうちは手が震えるほどの怒りを感じていましたが、殺意を向ける対象があまりにも多すぎて、「絶対に殺してやる」と思う気持ちがぼんやりとしていくのを感じていました。彼女は課長だけでなく、会社でも、仕事先でも、股を開いて仕事を貰ってきていたのです。100円で体を売る、風俗嬢以下の売春婦になっていたのです。僕は激しく鬱になりながら勃起していましたが、どうしても彼女のことを許せませんでした。
「ごめん。もう、いいよ」
そんな言葉しか言えなかった気がします。よく覚えていませんが、僕はその場で彼女に別れを告げて、先にアパートに帰ってきました。彼女はその日の夜も帰ってきませんでした。きっと、どこかの刑事の家で、昨日と同じようなことをしていたのでしょう。次の日の昼、彼女は戻ってきましたが、僕とほとんど会話を交わすことはありませんでした。二人で住んでいたアパートは僕の名義で借りていたので、彼女は荷物をまとめて、その日のうちに出て行ってしまったのです。
出て行く直前、「ヒロくん、ごめんね。最後にお口でしよっか?」と言われ、僕は本当に心が揺り動かされましたが、「ううん、いいよ。もう会わないから」とだけ、言いました。これが最後でした。僕は彼女の親と、僕の親双方に申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、どちらにも事の真相は話しませんでした。
数日経って、アパートのポストに手紙が入っていました。綾香からでした。内容は、僕が期待したようなものとは程遠かったです。最初のうちは「ごめんね」「許して」「出来心だったの」という言葉が連なっていましたが、次第に内容は自己弁護的になり、「課長も本当はいい人」だとか、「ヒロくんよりずっと大事にあたしを抱いてくれたから、離れられなくなっちゃったの」とか、僕をむなしくさせる言葉ばかりが書いてありました。彼女は家で待つ僕よりも、歯が浮くようなせりふを並べる汚い親父たちの言葉に浮かれ、簡単に股を開いていたのです。
「ヒロくんは絶対コンドームをしないとあたしとしてくれなかったけど、課長は生で犯してくれて、『産んでいいぞ』って言ってくれたの。とっても嬉しかったよ。あたし、本当はヒロくんにそう言って欲しかったんだ」
そこまで読んで、僕は手紙を破り捨てました。ゴミ箱に投げ捨てて、おいおいと泣きました。僕の何がいけなかったのか、どうすれば綾香はこんなふうにならなかったのか、今でもわかりません……。
みなさんも電車の中吊り広告で読んだかもしれませんが、それからしばらくして、綾香の記事が週刊誌に載りました。「○○新聞社社会部の女性記者、体で特ダネを取っていた!」「捜査一課長、スキャンダルで異例の更迭」「官舎で夜な夜な行われる変態パーティ、画像や動画がネットに流出」。毒々しいフォントで、そんなセンセーショナルな見出しが踊っていました。僕はもう打ちひしがれ切っていたので、そんな記事を読んでも特に何も感じませんでしたが、それから数週間して、ある動画がネットに流出しているのを見つけたときは、さすがに落ち込みました。どこかの公衆トイレで嬉しそうに男のチンポをしゃぶっている女。彼女が着ていたのが、うちの大学のチア衣装だったからです。それは、間違いなく綾香でした。僕の知らない綾香でした。綾香のそれからのことはよく知りません。共通の友達から聞いた噂では、新聞社を退職したあと夜の世界で働くようになり、キャバ嬢、ソープ嬢、デリヘル嬢と順当に堕ちていったということです。数年前、歌舞伎町を歩いていたときに一度よく似た女性を見かけましたが、けばけばしい化粧をして煙草を吸いながら、見るからに豊胸手術をしたとわかる巨乳を露わにして歩いていた彼女と綾香が同一人物だったのかは、今となってはわかりません。
最後になりますが、「四宮綾香」は仮名です。少し変えれば彼女の本名になりますが、わかる人はあんまりいないでしょう。僕はあれから女性不信になり、どんな清純そうな女性をみても「陰では色んな男とおまんこしてるんだろう」「あの女はいくらで体を売るんだ」と、そんなことばかり考えてしまうようになりました。彼女は今もいません。これからも、たぶん出来ないと思います。
【綾香 -中年親父のモノにされた僕の彼女- 完】
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