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【第26章】終わる世界②

最終更新:2010/06/03 15:56 │ 【小説】工藤夫婦の堕落 | コメント(1)

【第26章】終わる世界?

 

 

聞き慣れた駅のアナウンスとともに、ホームに電車が滑り込んで来た。金曜の夜8時。車内にはこれから飲みに繰り出す会社員や、学校帰りの学生たちで賑わっている。僕は扉付近の鉄棒によりかかって、股間の勃起を周囲に悟られないよう前屈みになりながら、もじもじとしていた。すぐ隣には可愛らしい女子高生が1人、つり革につかまって立っており、胸元をかすかにのぞかせながら電車の揺れに身を任せている。じわじわと股間を熱くさせている僕は、何度自らを戒めても、どうしてもその子の体を舐め回すように見てしまうのだった。いったい何日分たまっているのか、オナニーを禁じられた体は僕の精神を支配し、しじゅう変態的なことしか考えられないみじめな男にしていた。


ハニカム  ハニカム

 

列車がやがて複数の線が乗り入れている大型駅に着き、車内は急に混み合いだした。さきほどの女子高生は乗り込んできたサラリーマンの集団に押されて、ぴったりと僕の体に密着した。とても小柄で、身長は150センチくらいではないだろうか。半袖の白ブラウスに、濃いグリーンのスカート。黒のハイソックスが、期せずして男の劣情をそそっている。部活帰りなのだろうか、肩からはテニスのラケットを提げていた。

ショートヘアの黒髪が美しいその少女の胸は、体格に似合わず大きくふくらんでいた。そのやわらかい感触が、電車が揺れるたびに僕の右腹にぎゅうぎゅうと押しつけられる。汗ばんだ胸元からは、ピンク色のブラジャーがちらちらとのぞいて、僕の脳を刺激していた。彼女の髪からわずかにシャンプーのような清潔なにおいが漂い、ぼくはしばし妄想の世界に陶酔した。

 

 (ハァ・・・ハァ・・・やばい、ばれたら大変だぞ)

 

 僕はこみ上げる劣情をなんとかなだめようと必死になった。もういつから射精をしていないのか、僕の下半身はたまりにたまった性欲でパンパンになり、今すぐ解放してくれと本能にささやきかけてくる。興奮が最高潮に高まり、僕はおむつの中で、勃起したチンポの先が金属の檻にキスをするのを感じていた。

 

      * * *

 

 10分後、電車は目的の駅に到着した。ホームに流れ出す人の河の中で、僕は思いがけない誘惑にさらされたことにため息をつき、改札へと向かった。あやうく逮捕されるところだった。僕は話したこともない少女に興奮し、公共の場で襲いかかりそうになった自分を哀れに思うと同時に。強烈な情けなさを感じていた。

 

「・・・あっ」

 

改札へ続く階段を下りている途中、僕は小さく声を上げた。小便がしたくなったと感じたと同時に、おむつの中に今日3度目のお漏らしをしてしまったのだ。階段の途中で突然立ち止まって身をふるわせている僕を、人々はけげんな表情を向けながら追い越していった。まさかお漏らしに気付かれたはずはないだろうが、僕は恥ずかしさに顔を赤くし、陰鬱な気分をより深くさせた。外を歩けば少女にすら劣情を催し、その10分後にはおむつの中に小便を漏らす。僕はもう、まともな人間ではないのだ・・・。

 

 

 

 改札を出たところで、メモしておいた番号に確認の電話を入れることにした。携帯電話がないので、仕方なく駅の公衆電話に10円玉を投入する。携帯が普及してからというもの、公衆電話というものは絶滅状態にあると思ったが、探せば意外とどこにでも残っているものだ。

 

「・・・あ、佐藤です。・・・はい、はい、今北口改札に着きました。ええ・・・ローソンを左に曲がって、まっすぐで・・・」

 

先ほど名乗った偽名を名乗ると、慇懃な口調で話す男性店員が道を誘導してくれた。きょろきょろとあたりを見回すと、店員の言う目印のコンビニが目に入る。迷わないように、ぼくはしっかりと道順を記憶した。

 

「ええ・・・それでいいです。時間ですか?ええと、何分のがあるんでしょうか・・・はい、じゃあそれで・・・。ああ、そういうのはいいです・・・」

 

当店のご利用は初めてですよね、コースはどういたしますか、クーポン券のご利用などはございませんか。にこやかな口調で、いろいろと質問してくる店員。僕はそのどれもにあいまいな返答をして、電話を切った。もうすぐ咲希に会えるかもしれないというのに、全く気分は高揚しないままだ。財布の中が心許ない。夫婦共用にしていた口座のキャッシュカードは咲希とともに姿を消しており、僕に残されたのは結婚前に貯めていた10数万円の貯金だけだった。僕はコンビニのATMでそのうちなけなしの3万円を下ろすと、店員に言われたとおりの道順で、都内有数の歓楽街へと歩き始めた。

 

* * *

 

猥雑な通りの一角にある、ややこぎれいなラブホテル。僕はその一室で、ピンク色のシーツに包まれた大きなベッドに腰を下ろしていた。「お部屋に入られましたら、確認のためもう一度お電話を下さい」と言われたことを思い出し、枕元に備え付けられた電話でもう1度、あの番号をコールする。

 

「はい佐藤様、お部屋番号は402でございますね。さくらさんすぐにお伺いしますから、ドアの鍵を開けてお待ち下さいませ」

 

 身じろぎもせず、ベッドに座って待つ。心臓の高鳴りがやまず、僕はごくりと固唾をのんだ。手にじわじわと汗をかく。別人であってくれと願いながら。事ここにいたって、そんな奇跡はおきようはずもないのに。僕は頭を抱えて、心の中で初めて神様に祈った。そのドアの前に立っているのが咲希でありませんように。全てが僕の勘違いでありますように。こんなところに、咲希が来るはずがないんです・・・。

 

ピンポーン。

 

4分後、部屋のチャイムが鳴った。ドグドグという心臓の音が、まるで耳のすぐ側で鳴っているように感じる。緊張のため、口の中が乾燥してとても不快だ。僕はのろのろと立ち上がり、恐怖と期待がない交ぜになった複雑な感情を押し殺して、ついにそのドアを開けた。

 

 

 「こんばんはー、『人妻不倫SM倶楽部』のさくらでーす♪」

 

 

 (――ああ、やっぱり・・・)

 

 

 サイトの写真で見たのと同じ、不自然な爆乳。ラメだらけのグロスを施され、艶めいた唇。マスカラでゴテゴテとしたまつげに、くるくると巻かれた金髪。ブラウスのボタンは乳首が見えそうなほどまで外され、男に白い乳房を見せびらかしている。そこに立っていたのは、風俗嬢らしく淫らな服装をし、にこにこと営業スマイルをする僕の最愛の妻、咲希だった。

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リッチドールの奈々子です。宜しくお願いします。+.(・∀・).+ http://mobi.l7i7.com
[ 2012/10/18 03:34 ] [ 編集 ]

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