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【第21章】目覚め

最終更新:2010/05/27 01:39 │ 【小説】工藤夫婦の堕落 | コメント(0)

【第21章】目覚め

 

 

ぼくは、長い長い夢を見ていた。現実との境目がわからなくなるくらい、際限なく続く夢の繰り返し。よく覚えていないが、記憶をそのままリプレイしたようなリアルな夢もあり、全くありえない荒唐無稽な夢もあったと思う。幸せなものもあれば、陰鬱なものもあった。咲希とした初めてのデートや、大学の卒業式の夢。会社で働いているだけの夢。咲希との結婚式の夢。延々と営業成績をなじられる夢。何者かに追われて刺される夢。咲希に浮気され、捨てられる夢。

上下左右の感覚もなく、ふわふわと漂うような感覚がいつまでも続いた。ときおりふっと現実に戻され、見慣れた寝室の天井が目に入った気がしたが、またすぐに意識は途切れた。現実と夢想のあいだを行き来する旅はとてもつらく、長い長い責め苦だったことだけを覚えている。

 


ハニカム  ハニカム

              * * *


 ぼくは、何度も繰り返したまどろみの末、ようやく意識を取り戻した。体を起こそうとするが、ぜえぜえと息が切れて、めまいとともにまたすぐベッドに倒れこんでしまう。あたりを見回すまでもなく、家の寝室で寝ていたことがわかる。全身に力が入らず、妙な感覚だ。軽い頭痛も感じる。額に手をやると、珠のような汗が無数に浮かんでいた。少なくとも平熱でないのは確かだった。

 大きな息を何度もついて、頭をぶんぶんと振る。こめかみはまだ痛むが、そうすることでようやく意識がはっきりしてきた。枕元の時計では現在4時をわずかに回ったところだったが、窓の外の明るさからはいまが夕方なのか、未明なのか、判断するのは難しかった。

 

 しばらくぼくはぼうっとしていた。ぼくはいつから寝ていたんだろう?あたりを見回すが、咲希の姿が見えない。耳をすますが、家の中にいる気配は感じなかった。ぼくは大きな声で妻の名を呼ぼうとして、なぜか、一瞬それが「絶対にしてはいけないこと」だったような気がして、一度ためらった。不思議な感覚。何かを思い出せそうな気がして、ただそんな気がしただけだった。気を取り直して咲希の名前を呼んでみる。答えはない。一体ぼくはどうなってしまったんだろう?

 

 体中が汗でびしょびしょなことに気づいて、ようやく布団から抜け出した。とにかく体にまとわりつく不快なパジャマを脱ごうとしたとき、ぼくは鼻を突くような異臭を感じた。駅の汚れきったトイレなどでかぎなれたアンモニア臭。ぼくは股間のまわりが汗以外の液体でぐっしょりと濡れていることに、遅ればせながら気がついた。

 

「なんだこれ・・・」

 

 おねしょでもしたのか?ぼくが?…まさか。

 

ぼくはふらふらと立ち上がって、ズボンを脱ごうとした。股間のあたりがとても妙な感覚だ。パジャマのズボンは大きくふくらみ、まるでパンツを4重にはいているかのような不快さがある。記憶はまだはっきりしないが、とにかく今はまず、体を洗って着替えをするのが先決だ。ふらふらと壁伝いに歩きながら、ぼくは2Fの突き当たりにある風呂場に向かった。

いったいこの不快感はなんなんだ。歩くたびに股間がこすれ、陰茎が腫れ上がっているようにじんじんと熱くうずく。分厚い下着の感触がとても邪魔で、歩きにくい。ぼくはいらだちながら風呂場に到着すると、手早く上下のパジャマを脱ぎ捨てた。

 

「…はあ?…なんだ、これ…」

 

 目覚めて二度目の「なんだこれ」だ。ぼくがパジャマの下にはいていたのは、なんとごわごわになった幼児用おむつだった。どうりで歩きにくいわけである。腰の当たりに「XLLサイズ」とあったが、いくらなんでも成人男性がはくのには無理がある。しかもそのおむつの前後には、日曜朝に放映されている女児向け美少女アニメのキャラクターが、でかでかとプリントされていた。

ピンクの服を着込んだ金髪の少女が、ぼくの股間で魔法のステッキを持ってウィンクしている。僕は全身を鏡に映して、最悪に陰鬱な気持ちになった。成人男性が女児用のおむつを穿かされているなんて、これ以上に屈辱的な格好があるだろうか。ぼくは咲希のいたずらかといぶかしんだが、ともかくぼくが寝ているあいだ、何度も同じおむつに失禁しつづけてしまったことだけは確かなようだった。

水気でびったりと腿にはりつくおむつを、慎重にはがしていく。早くこの不快なモノから逃れて、さっぱりしたい。ようやく綺麗にはがしおわり、ばりっとおむつを脱ぎ捨てたそのとき。

 

 ぼろんっ。

 

 えっ、と声が漏れた。ふざけた柄のおむつをずるりと下げたら、中から異様なものが飛び出してきたのだ。先ほどからじんじんと熱を持ったそれの正体を知り、僕は頭をハンマーで殴りつけられたような衝撃を覚えた。絶句して風呂場の鏡を見ると、そこには異様な物体を股間にぶら下げた、先ほどと同じくらい間抜けなぼくの姿が映っていた。




        貞操帯



 女児用のおむつの下にあったのは、見慣れたぼくのペニスとは全く違う、フランクフルトのように巨大なサイズの「チンポ」だった。下の袋までもがぼってりと赤く腫れ上がり、重たそうにゆれている。しかも、仮性包茎だった以前よりも包皮がはるかに長くなっており、まるでのびきったタートルネックのようにぶらぶらと亀頭をおおっていた。

しかし、本当に異様なのは陰茎そのものではなかった。黒人男性の持ち物のように不自然に大きくなったぼくのペニスは、根元から亀頭まで、そのすべてが金属製の器具に覆われていたのである。丁度すっぽりおさまるサイズに仕立てられた鳥かご状の銀色のケースが全体を完璧にガードしており、先端は穴も開けられることなくがっちり埋まっている。まるで、中世期の拷問器具のようだ。これでは小便器で用を足そうとしても放物線を描くことができず、まるで女性のようにあたりの床に撒き散らしてしまうだろう。

 

「何の冗談だよ・・・糞ッ!…外れないのか? 嘘だろ!カンベンしてくれよっ!おいッ!!」

 

慌てて取り外そうとしたが、ぼくの陰茎はぴったりケースにおさまっており、どのように爪を立てても全く器具が外れる気配はなかった。陰茎の根元には別部品になっているより細身のリングが食い込んでおり、全体を覆うパーツとのあいだには、なんと頑丈そうな南京錠までぶらさがっていた。試行錯誤を繰り返したが、どうしてもこの南京錠の鍵がなければ、陰茎に怪我をすることなく外すのは不可能のようだ。ぼくは全裸のまま、たっぷり数十分も自分の陰部と格闘したが、人差し指の爪が割れただけで、ついにそのケースから開放されることはできなかった。

 

(一体なにが起きてるんだよ…勘弁してくれよ…)

 

ぼくは陰部に異様な金属ケースをつけたまま、仕方なくシャワーをあびた。鼻を突くアンモニアの匂いから、今はとにかく逃れたかった。一体どれくらいのあいだ、僕は眠っていたんだろう?今はいったいいつで、どうして、いつから僕はこんな体になった?そうだ、仕事もどうなっているんだろう?こんな状態のぼくを置いて、咲希はどこへ消えてしまったんだ・・・。様々な疑問が脳裏をよぎったが、それに答えてくれる者は誰もいなかった。

 

 夫婦の寝室に戻り、クローゼットの中の清潔な服に着替えた。金属ケースの上からパンツをはくのにはやや抵抗があったが、今は仕方がない。チンポを潰さないようにうまくできるかどうかわからないが、いずれ工具か何かで壊せばいいんだ。

ともあれ、やっと人心地がついて、僕は嘆息した。

どうしても記憶がはっきりしない。ふと壁にかかったカレンダーを見たが、通年の1枚カレンダーでは、今が何月なのかすらわからなかった。まずは今がいつなのか確かめなければ。そして、早く咲希に帰ってきてもらわなければ。ぼくはそう思い立ち、自分の携帯電話を探したが、部屋の中のどこを探しても見つからなかった。

 

(しょうがない、パソコンを開くしかないか)

 

書斎にあるパソコンとは別に、居間には常時起動している夫婦共用のノートPCがあった。ふらつく足に喝を入れ、手すりをつかみながら慎重に階段をおりようとしたが、そのときある異変が、突如ぼくの体に起こった。

 

ジョジョーーーーーーーーッ!じわああああああああ・・・

 

3段ほど階段を下りたところで、着替えたばかりのズボンの股間部分に、いきなり生暖かさを感じた。下半身を見下ろすと、円形の染みがみるみるうちに股間に広がっていき、黄色い液体がズボンのすそまでつたって、あっという間にくるぶしを濡らしていた。

失禁。まったく尿意など感じていないのに。

信じられないことだが、ぼくは20代後半にもなって、自宅で立ったままお漏らしをしてしまったようだった。一瞬呆然としかけたが、とにかくぼくは慌ててズボンを足から抜いた。そうしているうちにもションベンの勢いはやまず、かといって放物線を描くでもなく、金属製のチンポケースの隙間からフロアのあちらこちらへと撒き散らされた。どうしようもなかった。ぼくはおしっこが間に合わなかった幼児のように、再び下半身からアンモニアの匂いを沸きあがらせながら、ただただ立ち尽くしていた。

 

           * * *

 

 

再度のシャワーのあと。成人してはじめての失禁に打ちひしがれた僕は、今度こそふらふらとリビングにたどり着いた。咲希がいないほかは、いつもと変わらない室内の風景。ぼくはスタンバイ状態になっているはずのノートパソコンを立ち上げようとして、ダイニングテーブルの上に小さな置手紙があることに気づいた。よろよろとテーブルに近づき、紙片を拾い上げる。A4サイズの便箋に、サインペンで大きく「大好きな翔太さんへ」と書かれた、短い手紙だった。間違いなく咲希の字だ。ぼくは暗闇の中で一筋の光明を見た思いがして、むさぼるようにその文章を読んだ。

 

 


★大好きな翔太さんへ

 

よく眠れたかしら? もう気づいてるかもしれないけど、あなたが寝ているあいだに、ずいぶん長い時間が過ぎました。記憶ははっきりしているかしら?いまごろ、あなたはいろいろと自分の体に起きた変化に驚いているのかな?うふふ、とっても楽しみ。

 

いろいろと不安になっているかもしれないけど、あたしは翔太さんのことをとっても心配してます。まずは体調を整えることを考えてね。気分がよくなったら、このアドレスのサイトを見てください。そうすれば、きっと色んなことを思い出せるはずです。全部見終わったら、いまのあたしに繋がる電話番号がわかるようになってるからね。
翔太さんから電話が入るのを楽しみに待ってます。早く来てね!

 

あなたの咲希より

 

http://blog.livedoor.jp/io_world/archives/xxxxxxxx.html

 

PS:あなたのお気に入りのおむつは玄関にあるからね♪

 

 
            * * *

 

 僕は手紙を読み終わり、何かが脳裏に蘇ってくるのを感じていた。強烈な違和感。何を忘れているのかわからないのに、どうしても思い出してはいけない気がする。玄関をのぞくと、果たしてそこには手紙のとおり、先ほどのアニメ柄のおむつがうずたかく積み上げられていた。

 


 ぼくは、このおむつに、見覚えがある。


 

がたがたと震える手でパソコンを起動し、インターネットのアドレス欄に先ほどの文字列を打ち込んだ。ジジジと小さな音を立てて、あるサイトが立ち上がった。

 

 咲希はどこにいるんだ。


 早く帰ってきてくれ。


 咲希、ぼくを助けてくれ!


 ぶつぶつと呟きながら、ぼくは次々に表示される文章に、むさぼるように目を通していった。その果てに何があるかも知らず。この文章さえ読み終われば、咲希が帰ってきてくれると信じて。



~変態さくらの寝取られ日記【Part.1】へ続く~

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